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2016-08-17

【女史コラム】ずっとここにいたい。「東山魁夷」展へ

【初めまして。まずは軽く自己紹介】

アジアン・マーケットの室井です。
8月から「ココ」で本格的に働き始めました。

ココでは、毎日色々なことが起こります。その度、笑ったり怒ったり、廊下に倒れて「もうダメだー。」と言ったり…笑

その色々なことについてや、仕事の裏話。プライベートのことなど。つらつらと書いていけたらいいなと思っています。

軽く自己紹介。

特に好きなものは、アート。誕生日は、豊臣秀吉とお揃いの1月1日。

これ以外のことは、追々書いていけたらいいなと思っています。

更新は、1ヶ月に1回かもしれないし、連続的になる時もあるかもしれません。気の向くままに書かせてもらおうと思っています。

おヒマな時にでもお付き合いください。どうぞよろしくお願い致します。


【「ずっとここにいたい。」】

九州国立博物館で、7月16日(土)〜8月28日(日)まで開催されている「東山魁夷」展に行ってきました。

今回の展覧会の見所の1つ、襖に描かれた「唐招提寺御影堂障壁画」。

日本の海の風景や、中国の風景などが、襖絵として全68面に渡って描かれています。

この展覧会の中で最も私が惹かれたのは、この襖絵の内の12枚に描かれた、海の風景。

 

「私、ずっとここにいたい。」

 

そう感じる程に。
(実際、この絵の前で20〜30分はうろうろしていたみたいです…。笑)

「群青」「緑青」という名前の岩絵の具が使われた色彩は、とても淡い色味で、「青」とついていますが、どちらかというと穏やかな緑色。

もしこの世と”この世じゃない場所”に、1本の白い線がピーッ…と、引いてあるなら。
(それは、枝で描いたみたいな細いラインで。)

その線を少しだけ飛び越して、つま先だけ地面に足を着けているような感覚。

海の中に両手両足を投げ出してたゆたっているような。

不思議な心地よさでした。

 


【さあ、彼の世界に入ろう。】

右から左へ(あるいは左から右へ)、途中に90度の角を持って、襖絵は並べられています。

入り口から見て左から、優しく波が訪れる「波打ち際」。

ざざん…ざざん…。

やさしく波が押し寄せては引いていきます。波が引く間際の白い淵が、名残惜しそうにしています。

波が来たばかりの場所と、少し時間が経った場所で色が違う砂浜は、きっと歩いたら濃い茶色の足跡がつくんでしょうね。

右に視線を動かして…。そこは深い場所。浅瀬と違って、今度は濃い青色です。

足がつかなさそうな深さのその場所は、少しの恐れを持って、でも深みを感じる神秘的な雰囲気です。

更に右へ…。黒くてゴツゴツした岩の上に波が乗って、白いしぶきが上がっています。

乗り上げた後、下へ流れていく波は、人が抗える物ではなく、自然の恐怖を感じさせます。

次は、岩に打ち付ける波。

勢いを持って岩にぶつかった波は、跳ね返って、その強さを後ろに持っていかれます。

波打ち際の優しさはどこへやら。一瞬でのみこまれてしまいそうな荒々しさを持っています。

最後、一番右。地球の引力に引っ張られて、盛り上がった波が押し寄せてきています。

まだぶつかる場所もなく、引っ張られるままのその姿は若々しく、これから始まる「旅」を予感させます。

 


【海って。】

…と、こんな風に感じたんです。

というか、帰って来て改めて感想を書いたらこうなっちゃったんですけど。笑

私は都会っ子(とは言っても都会の田舎、福岡県民ですが…笑)なので、海を見た回数はそんなに多くありませんが、これまで見て来たどの海とも違う。

瀬戸内の海の、光を多く含んだ露光オーバーみたいな白い海とも。
糸島の、海か空か分からないほど真っ青な海とも違います。

心が安らかになる不思議な色で、空間でした。

近くでじっくり眺めたり、遠くから全景を見てみたり…。

この襖に囲まれて畳の上でごろんと出来たら、どれだけ気持ちいいか…!
(無作法かな?!でもやりたい!)

さて。海の襖の話題はここまでにしておきます。

みなさん、興味を惹かれたら、どうぞ見に行ってくださいね。笑
この展覧会全体に感じたことを綴って、今回は締めくくろうと思います。


【目の前に浮かぶのは、あの頃の記憶?それとも…。】

展示室に入った瞬間から不思議な浮遊感。

見続けていくうちに「ああ…こんな風景あったよな」って。

昔見たものって、もうすっかり記憶から抜け落ちているものだと思っていたんです。

特に自分は、親から「あんたはなんでもかんでも忘れるね」と言われるほど、本当に何にも覚えていなくて。笑

でも、東山魁夷の絵を見ると、目の前に浮かんでくるんです。

大きなフレーク状の白い雪が目の前を横切って行く光景や、青々とした木が生い茂る山の風景の中に、1本だけ赤い木がヒョッコリ顔を出している光景が。

「ああ、いるよね。こういう目立ちたがりの子。笑」って。

描写としては写実的ではないし、日本画なのでむしろ平面的なのですが、不思議なほど心に入ってきます。

あなたの中にも、絵を見て思い出されるものがきっとあるはずです。

 

忘れている“つもり”の記憶。

 

例えばそれは、昔登った山の緑かもしれないし、雪の降り積もった細い木の枝かもしれません。

自分と対話するのも、私は絵画の楽しみ方だと思っています。

自分の中にある大切な記憶、この「東山魁夷」展で、何か見つかると思います。

ぜひ。


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